あと、ヴェーネスは結局ヒカセンと共に逃げ延びたので、ただ一人だけ記憶を失うことなく「先逝く星々が出した命のこたえ=抗えない絶望、それこそが終末、それに抗い続けなければ答えを示せない」と楽園での緩やかな生を望む古代人たちを分かち、目まぐるしく流れる生と死の中でそれでも明日を望む強さを見出してほしいと本当にただ一人だけ戦ってきたんだなと…。
それなのに一方ではアーテリスを捨て、新天地へ向かわせる準備も進めてたということだけど、あれは本当にどういう意図だったんだろう。終末を乗り越えるだけの強さを現生人類は手に入れることができなかったとき、新天地で新たに強く生き抜いてほしい…などという希望的観測ではないよね。
少なくとも、ヴェーネスがハイデリンとなって楽園という過去に縛られた古代人を世界ごと分割したのはそんな意図ではないし、終末を乗り越えられなかったということは絶望をどうにもできなかったということで…そんな人類が、アーテリスを捨て新天地に降り立ったとして、根付くことができるんだろうか。新天地を見つけるまで途方もない年月がかかるかもしれないのに? 余計に絶望しそう。
となると、月に建造された諸々の施設、あれは逃げ出すためのものではなく、「終末と戦うための舞台装置」なんじゃなかろうか。現生人類が終末の存在を知り、戦うことを選んだとき、宇宙のどこかに創られた絶望の巣を探し当て、そこに向かうため…だよなあ。
ここまで言い切って、自らハイデリンとなって世界を分断してまで人の可能性に賭けた彼女が、逃げて新天地を探して生き延びろ、というのはやはり少し違うよなあと。



