ティナを抱くのはこれが初めてではない。こうして腰を沈めるときの気持ちよさは記憶にあるものと寸分違わなかった。そこで初めて気がついた。男女の情愛も、行為の意味も理解していなかったティナだったが、エドガーが一方的にティナの身体を開いたあの夜ですら、ティナは痛みに顔を歪ませはしたものの、エドガーを拒みはしなかったことに。無理やりこじ開けて押し進んだとばかり思っていたが、エドガーを拒んで閉じていようとはしていなかった。今日のように、狭さこそあれどエドガーを温かく包み込み、もっと奥へといざなっていた。
都合のいい思い込みなのかもしれない。ティナに拒まれたくないという自分の願いが、記憶と認知を捻じ曲げているだけなのかもしれない。
だが――。
「……っ、ティナ、大丈夫かい……苦しくはない?」
「うん、大丈夫……んっ、エドガーの身体が熱くて、私の中がエドガーでいっぱいで……うれしい……」
両腕をエドガーの首に回して、涙を浮かべて微笑むティナの紡ぐ言葉を受け取ると、全てが杞憂と化した。きっと最初からティナはずっとエドガーを受け入れてくれていたのに、「ティナはわかっていないのだから」と勝手に思い込んでティナを抱きながら拒絶した。何と愚かなことをしたのだろう。ティナを身勝手に抱いたことよりも、ずっと深いところで傷つけた。それでも、ティナはエドガーを拒もうとはしなかった。
答えはずっとそこにあったのに、見ようとすらしなかったことをエドガーは深く悔いた。だが、どれだけ後悔しようと過去は変えられない。それならば、取るべき行動は一つだ。
「ティナ……愛してる。愛してるよ」
ティナの細い指に自分の指を絡ませ、青の視線が絡み合う。
「もう二度と離さない。君から目を背けたりはしない。だけど、俺は臆病で情けない王だから、また間違えて君を傷つけるかもしれない。そのときは……」
「エドガー……」
お互いに生まれたままの姿で、身体を繋げている今、心を覆い隠すものなど何もありはしない。だから、ティナの言葉もすんなり入ってきた。こうなる前なら、受け入れられなかったであろう一言も。
「エドガーが間違ったことなんて、一度もないわ。私を傷つけたって貴方は言うけれど、その分貴方は自分のことも傷つけてきたじゃない。そういうのはだめよ。ね?」
子供に諭すかのようなティナの言葉と表情が、エドガーが砂の中に埋めたはずの最後のわだかまりを引き上げて、星明かりの中に雲散霧消させてゆく。心が晴れて、今エドガーの中にあるのは素直に目の前の少女を愛する気持ちだけ。
「"ママ"には敵わないな」
口を突いて出た言葉はエドガーのどこか固かった表情をふわりと和らげた。するとティナが目を丸くしたので、エドガーもつられて丸い目をした。
「笑った……」
「え?」
「エドガーがそうやって笑うところ、初めて見たわ」
ティナの瞳にみるみるうちに涙が浮かんで、今にもこぼれ落ちそうになるのを見てエドガーは焦った。一体何がまずかったのか、自分の言動をよく反芻しても、これまでの経験と照らし合わせても今度こそまるでわからない。
「ど、どうしたんだい急に」
「だって、エドガーは笑っていてもいつもどこか壁があって、なんだかとても寂しい気持ちになったのに、そんなふうに笑ってくれたの初めてだったから、私嬉しくて」
ぽろぽろとこぼれる涙を骨太の指で拭ってあげると、ティナがその手を取って自らの頬に押し当てる。
「エドガーの笑顔は素敵ね。身体も何もかも大きくて温かくて、私大好きだわ。もっとエドガーのことを知りたい。貴方がどういうときに嬉しくて、どんなふうに笑って……全部、教えてくれる?」
「俺も、君が嬉しいと言って涙をこぼすのは初めて見たな。女性の涙は苦手だけど、こういう涙なら歓迎かもしれない。俺も、ティナのことをもっと知りたい。……そのためにも……」
ぴくっ、とティナの中でエドガーがその存在を主張する。ティナははにかんだ笑顔を見せると、こくりと頷いてエドガーの腰に脚を絡ませた。
それを合図に、エドガーはティナの頬にキスを贈ると、腰をゆっくり動かし始めた。「んっ……」とエドガーの動きに合わせてティナが甘い声を上げるが、口唇をきゅっと締めて声が漏れないように頑張っているので物足りなく感じる。
「声、聞かせて。ティナの声が好きだから、沢山聞きたい」
「んっ、でも、聞かれちゃう……」
ふるふると首を横に振るティナに、エドガーは微笑んで顔にかかったふわふわの髪を除けてやる。
「大丈夫。ここは俺の部屋だから、俺にしか聞こえないよ」
「あ……っ!」
言うが早いか奥まで突き上げてやると、ティナがたまらずに声を上げる。その声に、頭の芯まで甘やかに溶けそうな心地がした。
もっと聞きたい。どんな顔をして、どこがたくさん気持ちよくて、どんな声を出すのか。もっとティナを知りたい。その先に何があるのか、ティナとならどんな景色が見られるのか。
ティナの中を擦り上げる度に、ティナの中から溢れた温かな蜜がエドガーの太腿を濡らし、エドガーを離したくないとばかりにきゅうきゅうと締め上げる。それがとても気持ちよくて、ティナもエドガーと同じ気持ちなのだということが感じられて、たまらない。エドガーを全身で感じて甘い声を上げるティナの表情の艶やかさ、桜色に染まった肌の美しさ、エドガーの動きに合わせてふるふると揺れる胸の膨らみの愛らしさ、どれほどのものかと伝えたいと思っても、言葉が何も出てこない。出てくるのは、ティナの嬌声に合わせて漏れる、快楽を享受している証の呻きにも似た声だけ。
「……ふ、っう……、ティナ……っ」
「エドガぁ……っ、あ、んっ! あ、あ、……っ!」
ティナの口唇に自分のものを重ねて、きつく抱きしめながら腰を突き入れる。上も下もティナでいっぱいになって、奥の奥まで繋がっているのが気持ちいい。雨の夜にティナを抱くとき、これほどまでにティナでいっぱいになったことはなかった。いつだって雨が降っていて、それなのに砂漠は渇き続けていた。欲しくて仕方ないのに、実際に身体は直接繋がっているのに、いつもどこか隔たりがあってティナの身体の温かさが悲しかった。
今は、違う。ティナの奥まで己を突き立てる度に、溶け合いそうな熱が広がって、ティナの心まで伝わってくるような気がして、ただただしあわせだ。ティナの温かさが嬉しくて愛おしくて、自分も同じものを返せたらと思う。このままひとつに溶け合ってしまいたい。
「ティナ……っ、は、愛してる……、君も同じ……?」
「エドガー……! あ、愛してるわ……っ、貴方を、感じる……うれしい」
「……ティナ、俺も……う、く、出していい……? 君の中に、俺の、全部……っ」
「あ、あっ……、きて、エドガ……っ、あぁあ……っ!」
熱が高まるのに身を任せて、ティナの中に全てを吐き出した。それと同時にティナは身体を引き攣らせ、エドガーの全てを飲み込もうと中がビクビクと収縮する。
「う、はぁ……ぁ、ティナ……」
「あ、あ……エドガー……」
ティナの中で白濁を吐き出す感覚を感じながら、エドガーは内心苦笑を禁じ得なかった。ここまでのものだったのか。こんなになるものだとは知らなかった。
絶頂の余韻でティナの目尻に浮かぶ涙を拭って、ティナの上にがくりと覆い被さる。女性との行為でここまで体力を持っていかれたことはなかった。だが、心は温かなもので満たされていて、脱力感がとても心地良い。
「貴方は本当にあったかいのね、きもちいいわエドガー……」
エドガーの髪を撫でながら、ティナがぽつりと呟いた。頭がふわふわとしてくる。
「ティナもとても温かくて……きもちいい……」
月明かりの向こうに、何かが飛び去っていくのが見えた気がした。もう、迷いはない。怖いものもない。自分をありのままに受け入れてくれる人がここにいた。
……ああ、雨の夜に俺の隣で眠るとき、ティナもきっとこういう気持ちだったのだな。
「ティナ……あのときの答えを言わせてほしいな」
「あのとき?」
「そう。最後に君を抱いたとき、君は『エドガーは他の人と眠る方が好き?』と聞いてくれたね」
ああ、とティナが思い出したようにこちらを見つめてくる。その頬に口唇を落として、ふわふわの髪をそっと撫でてティナを抱きしめた。潰さないように力を加減しながら、けれど二度と離さないようにきつく。
「君を初めて抱いたあの夜からね、ティナと寝るのが一番好きだったよ」
「よかった……」
一瞬目を丸く見開いた後、くしゃりと笑ってほっとしたようにエドガーの胸に顔を寄せてくるティナが何よりも温かくて愛おしくて、恋しかった。
「ねえ、エドガー」
「うん?」
「これからは、雨が降ってなくても一緒に眠っていい?」
「もちろん。できることなら、毎晩一緒に眠ってほしいな。この戦いが終わっても、ずっと」
「うれしい。私、エドガーといるのが大好きよ」
無邪気に微笑むティナと、柔らかく笑うエドガーの視線が交錯して、どちらからともなく口唇を重ねる。
窓から吹き込む砂漠の夜風すらも、互いの肌の温かさの前では無力に感じられた。
都合のいい思い込みなのかもしれない。ティナに拒まれたくないという自分の願いが、記憶と認知を捻じ曲げているだけなのかもしれない。
だが――。
「……っ、ティナ、大丈夫かい……苦しくはない?」
「うん、大丈夫……んっ、エドガーの身体が熱くて、私の中がエドガーでいっぱいで……うれしい……」
両腕をエドガーの首に回して、涙を浮かべて微笑むティナの紡ぐ言葉を受け取ると、全てが杞憂と化した。きっと最初からティナはずっとエドガーを受け入れてくれていたのに、「ティナはわかっていないのだから」と勝手に思い込んでティナを抱きながら拒絶した。何と愚かなことをしたのだろう。ティナを身勝手に抱いたことよりも、ずっと深いところで傷つけた。それでも、ティナはエドガーを拒もうとはしなかった。
答えはずっとそこにあったのに、見ようとすらしなかったことをエドガーは深く悔いた。だが、どれだけ後悔しようと過去は変えられない。それならば、取るべき行動は一つだ。
「ティナ……愛してる。愛してるよ」
ティナの細い指に自分の指を絡ませ、青の視線が絡み合う。
「もう二度と離さない。君から目を背けたりはしない。だけど、俺は臆病で情けない王だから、また間違えて君を傷つけるかもしれない。そのときは……」
「エドガー……」
お互いに生まれたままの姿で、身体を繋げている今、心を覆い隠すものなど何もありはしない。だから、ティナの言葉もすんなり入ってきた。こうなる前なら、受け入れられなかったであろう一言も。
「エドガーが間違ったことなんて、一度もないわ。私を傷つけたって貴方は言うけれど、その分貴方は自分のことも傷つけてきたじゃない。そういうのはだめよ。ね?」
子供に諭すかのようなティナの言葉と表情が、エドガーが砂の中に埋めたはずの最後のわだかまりを引き上げて、星明かりの中に雲散霧消させてゆく。心が晴れて、今エドガーの中にあるのは素直に目の前の少女を愛する気持ちだけ。
「"ママ"には敵わないな」
口を突いて出た言葉はエドガーのどこか固かった表情をふわりと和らげた。するとティナが目を丸くしたので、エドガーもつられて丸い目をした。
「笑った……」
「え?」
「エドガーがそうやって笑うところ、初めて見たわ」
ティナの瞳にみるみるうちに涙が浮かんで、今にもこぼれ落ちそうになるのを見てエドガーは焦った。一体何がまずかったのか、自分の言動をよく反芻しても、これまでの経験と照らし合わせても今度こそまるでわからない。
「ど、どうしたんだい急に」
「だって、エドガーは笑っていてもいつもどこか壁があって、なんだかとても寂しい気持ちになったのに、そんなふうに笑ってくれたの初めてだったから、私嬉しくて」
ぽろぽろとこぼれる涙を骨太の指で拭ってあげると、ティナがその手を取って自らの頬に押し当てる。
「エドガーの笑顔は素敵ね。身体も何もかも大きくて温かくて、私大好きだわ。もっとエドガーのことを知りたい。貴方がどういうときに嬉しくて、どんなふうに笑って……全部、教えてくれる?」
「俺も、君が嬉しいと言って涙をこぼすのは初めて見たな。女性の涙は苦手だけど、こういう涙なら歓迎かもしれない。俺も、ティナのことをもっと知りたい。……そのためにも……」
ぴくっ、とティナの中でエドガーがその存在を主張する。ティナははにかんだ笑顔を見せると、こくりと頷いてエドガーの腰に脚を絡ませた。
それを合図に、エドガーはティナの頬にキスを贈ると、腰をゆっくり動かし始めた。「んっ……」とエドガーの動きに合わせてティナが甘い声を上げるが、口唇をきゅっと締めて声が漏れないように頑張っているので物足りなく感じる。
「声、聞かせて。ティナの声が好きだから、沢山聞きたい」
「んっ、でも、聞かれちゃう……」
ふるふると首を横に振るティナに、エドガーは微笑んで顔にかかったふわふわの髪を除けてやる。
「大丈夫。ここは俺の部屋だから、俺にしか聞こえないよ」
「あ……っ!」
言うが早いか奥まで突き上げてやると、ティナがたまらずに声を上げる。その声に、頭の芯まで甘やかに溶けそうな心地がした。
もっと聞きたい。どんな顔をして、どこがたくさん気持ちよくて、どんな声を出すのか。もっとティナを知りたい。その先に何があるのか、ティナとならどんな景色が見られるのか。
ティナの中を擦り上げる度に、ティナの中から溢れた温かな蜜がエドガーの太腿を濡らし、エドガーを離したくないとばかりにきゅうきゅうと締め上げる。それがとても気持ちよくて、ティナもエドガーと同じ気持ちなのだということが感じられて、たまらない。エドガーを全身で感じて甘い声を上げるティナの表情の艶やかさ、桜色に染まった肌の美しさ、エドガーの動きに合わせてふるふると揺れる胸の膨らみの愛らしさ、どれほどのものかと伝えたいと思っても、言葉が何も出てこない。出てくるのは、ティナの嬌声に合わせて漏れる、快楽を享受している証の呻きにも似た声だけ。
「……ふ、っう……、ティナ……っ」
「エドガぁ……っ、あ、んっ! あ、あ、……っ!」
ティナの口唇に自分のものを重ねて、きつく抱きしめながら腰を突き入れる。上も下もティナでいっぱいになって、奥の奥まで繋がっているのが気持ちいい。雨の夜にティナを抱くとき、これほどまでにティナでいっぱいになったことはなかった。いつだって雨が降っていて、それなのに砂漠は渇き続けていた。欲しくて仕方ないのに、実際に身体は直接繋がっているのに、いつもどこか隔たりがあってティナの身体の温かさが悲しかった。
今は、違う。ティナの奥まで己を突き立てる度に、溶け合いそうな熱が広がって、ティナの心まで伝わってくるような気がして、ただただしあわせだ。ティナの温かさが嬉しくて愛おしくて、自分も同じものを返せたらと思う。このままひとつに溶け合ってしまいたい。
「ティナ……っ、は、愛してる……、君も同じ……?」
「エドガー……! あ、愛してるわ……っ、貴方を、感じる……うれしい」
「……ティナ、俺も……う、く、出していい……? 君の中に、俺の、全部……っ」
「あ、あっ……、きて、エドガ……っ、あぁあ……っ!」
熱が高まるのに身を任せて、ティナの中に全てを吐き出した。それと同時にティナは身体を引き攣らせ、エドガーの全てを飲み込もうと中がビクビクと収縮する。
「う、はぁ……ぁ、ティナ……」
「あ、あ……エドガー……」
ティナの中で白濁を吐き出す感覚を感じながら、エドガーは内心苦笑を禁じ得なかった。ここまでのものだったのか。こんなになるものだとは知らなかった。
絶頂の余韻でティナの目尻に浮かぶ涙を拭って、ティナの上にがくりと覆い被さる。女性との行為でここまで体力を持っていかれたことはなかった。だが、心は温かなもので満たされていて、脱力感がとても心地良い。
「貴方は本当にあったかいのね、きもちいいわエドガー……」
エドガーの髪を撫でながら、ティナがぽつりと呟いた。頭がふわふわとしてくる。
「ティナもとても温かくて……きもちいい……」
月明かりの向こうに、何かが飛び去っていくのが見えた気がした。もう、迷いはない。怖いものもない。自分をありのままに受け入れてくれる人がここにいた。
……ああ、雨の夜に俺の隣で眠るとき、ティナもきっとこういう気持ちだったのだな。
「ティナ……あのときの答えを言わせてほしいな」
「あのとき?」
「そう。最後に君を抱いたとき、君は『エドガーは他の人と眠る方が好き?』と聞いてくれたね」
ああ、とティナが思い出したようにこちらを見つめてくる。その頬に口唇を落として、ふわふわの髪をそっと撫でてティナを抱きしめた。潰さないように力を加減しながら、けれど二度と離さないようにきつく。
「君を初めて抱いたあの夜からね、ティナと寝るのが一番好きだったよ」
「よかった……」
一瞬目を丸く見開いた後、くしゃりと笑ってほっとしたようにエドガーの胸に顔を寄せてくるティナが何よりも温かくて愛おしくて、恋しかった。
「ねえ、エドガー」
「うん?」
「これからは、雨が降ってなくても一緒に眠っていい?」
「もちろん。できることなら、毎晩一緒に眠ってほしいな。この戦いが終わっても、ずっと」
「うれしい。私、エドガーといるのが大好きよ」
無邪気に微笑むティナと、柔らかく笑うエドガーの視線が交錯して、どちらからともなく口唇を重ねる。
窓から吹き込む砂漠の夜風すらも、互いの肌の温かさの前では無力に感じられた。