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2019/03/22 16:59
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 背中に冷たい空気を感じて、ふと目を覚ました。乱れたシーツと見慣れない部屋、意識にはまだ霧がかかっているようで状況が掴めない。腕に感じる重みと温もりの方に視線を移せば、身体を丸めてくうくうと小さな寝息を立てる女性がいる。霧が晴れて、自分の置かれている状況が掴めた。申し訳程度に身体にかかっていた布団を被り直して、彼女の細い身体を抱き寄せる。彼女は一瞬「んん……」と小さく声を漏らして、またくうくうと寝息を立てた。

「……ったく、子供みてえな寝顔しやがって」

 短く揃えられ、柔らかなウェーブを描くリルムの金髪にセッツァーはそっと口づけた。ふわりと鼻腔をくすぐる石けんの香りは、普段リルムが使っているものとは違うが、甘さの中に潜むほのかな酸味が彼女のイメージにぴったり合う。さすがフィガロ城の従者は城主同様、趣味がいい。それとも、王妃の趣味か。
 もっとその香りを堪能したくて、髪を少しかき分けてそのうなじに口唇を這わせる。ぴくりとリルムの身体が反応するが、特に起きる気配はない。床を共にするようになってから知ったが、リルムは意外と眠りが深い。事が終わればそのままふわふわとまどろんでしまい、朝まで目を覚ますことはない。セッツァーとしてはもう一度、と物足りない思いがないわけではないが、起こしてまで付き合わせるのも悪い気がして、そのまま一緒に寝ることにしている。まだ18歳と若いリルムは35歳のセッツァーに比べると体力面では大いに勝るはずだが、その体力は天才画家として生み出す作品の方に使われてしまっているらしい。
 セッツァーと男女の仲になってから時間もまだ浅く、それまで男性経験が皆無だったリルムにはペース配分というものがわからないらしく、セッツァーとの行為も常に全力投球だ。そのまっすぐさが眩しくて愛らしい。今の自分にはもうないものだ。だからこそ、逆に上手く受け止められるのかもしれないと思う。若い頃のセッツァーも今のリルムと本質は似ている。夢に向かってどこまでも全力でまっすぐだった。他の物など受け止める余裕は、なかった。

「リルム……」

 そっと名前を呟けば、胸の内がしあわせな気持ちで満たされる。こんな温かさで満たされる日が来るなんて、思いもしなかった。一度受け止めてしまえば、あとは包むだけ。そんな簡単なことのために何と遠回りをしたことだろうか。だが、その日々があったからこそ、今こうして包み込むことができるのだと思う。
 セッツァーの呟きに呼応するかのように、リルムの顔が胸元にこすりつけられる。ふっと頬が緩んだ。
 ……と、同時にリルムの豊かな胸の膨らみがむにゅりと押しつぶされる感触を感じて、違う気持ちも湧き起こってくる。一度自覚してしまうとそれを排して眠ることは難しい。

「無邪気ってのも考え物だし、俺も歳食ったってのにどうなってやがんだか」

 軽くため息をついて、リルムの頭の下から自分の腕をそっと引き抜いた。
 脚を絡ませ、緩く立ち上がりかけた己をリルムの腹の辺りにぐいと押しつける。柔らかく温かな感触に思わず息が漏れた。うたた寝をする自分に色々と「いたずら」を仕掛けてきた彼女に笑って「お仕置き」をしたが、自分も人のことは言えない。もちろん、起きていてくれた方がセッツァーとしては楽しいし、起こして続きをすることもできなくはない。だが、たまたま休暇代わりに一緒に滞在することになった自分と違って、リルムはフィガロ城に遊びに来たわけではないのだ。今ここで起こして続きをしてしまえば、きっと昼過ぎまでリルムは起きないだろう。
 そんなことでエドガーに小言を食らうのはごめんこうむる。
 リルムの胸を手ですくい上げるようにすると、その確かな重さに下半身が更に疼く。自身の手の動きに応じてむにゅむにゅと形を変える様を見ていると、自分でリルムを形作り染め上げていくような感覚がして興奮を煽る。寝ていても白い頬をほんのり染めて「んん……」と声を漏らしているのが、どうしようもなくかわいい。
 仰向けに寝かせると自らの重みで流れていこうとする肉を両手で寄せてふよふよと弄んでいるうちに、セッツァーの脳裏にひとつの好奇心が湧いてくる。
 リルムの身体をまたいで膝立ちになり、すっかりそそり立ってしまった自身を豊かな双丘で挟み込む。体勢はややきついが、柔らかく包み込まれる感触がリルムの中と少し似ていて、セッツァーは息を漏らした。そのまま腰を前にゆるりと突き動かせば、リルムのぽってりとした柔らかな口唇に先端が触れる。

「……は、結構本物に似てるもんだな」

 思わず荒い息を吐きながら、このまま動くかどうするか少し考えあぐねていると、寝ているはずのリルムの口唇が寝言のためかむにゃむにゃと動いた。セッツァー自身の膨らんだ先端をリルムの口唇が食んで、その感触に腰が粟立つ。

「……っ、やっべ」
「ん……ふふ」

 何の夢を見ているのか、リルムの寝顔がえへへと笑ったように見える。豊かな胸にセッツァーの物を挟み込みしあわせそうな笑みを浮かべながら、柔らかな口唇ではむはむと吸い付く様は、セッツァーの想像以上に視覚的に訴えてくる。吹っ飛びそうになる理性をかろうじて繋ぎ止め、ゆっくりと腰を動かせば自身の先走りでぬちゅぬちゅと湿った音が聴覚にも訴えてくる。

「ぅ……、……っ」

 リルムの胸の先端をつまみ上げながら屹立した自身をしっかりと挟み込み、腰を打ち付けてみてもリルムが起きる気配はない。起きているのかもしれないが、もうどうでもいい。きっと今の自分は、端から見るととても間抜けな姿なのだろう。17も年下の少女の寝顔に対する情欲でどうしようもないほどに塗りつぶされて、その衝動だけで突き動かされている。
 自分で挟み込みながら動くのがもどかしくなって、リルムの手を取って自身を握らせた。と言っても、リルムは眠っているので思うようには握ってくれない。それでもいいと、上から自分の手を添えて動かした。リルムの手は小さく柔らかくて、胸で挟み込むのとはまた違った趣があって気持ちいい。

「く……っ、ぁ、リルム……っ!」

 熱の高まりに身を任せて、欲望を吐き出す。迸る白濁はリルムの口元から胸にかけてを白く染め、セッツァーは快楽に身体を震わせながら熱い息を吐いた。寝る前にも思いきりリルムの中に出したはずだというのに、自分でもこの勢いには苦笑が漏れる。
 乱れた銀髪をかき上げ、リルムの柔らかな頬にそっと口唇を落とした。「へへ」と寝顔にしあわせそうな笑みを浮かべるリルムが愛おしくて、もっと奥まで繋がりたいという欲が頭をもたげるが、さすがにそれは起こしてしまうだろうと妙に冷静な思考がセッツァーを押しとどめた。やはり寝ているところに無体を働くよりも、しっかり起きた状態で自分の一挙一動に反応を返してくれるリルムが見たい。
 荷物の中から薄いタオルを取り出し、後始末をする。見た目には非常に興奮するものの、このままリルムが起きれば怒られるのは必至であるし、顔から胸にかけてべったりと己の白濁がこびりついた状態のリルムを正面から抱きしめるのも何となく憚られた。
 それにつけても、リルムの豊かで程よい弾力の胸でセッツァーの物を挟み込むというのは視覚的に相当な興奮を煽られた。次はリルムが起きているときに頼んでみるかと、弾んだ気持ちでリルムを抱き込み、布団を被った。
 しっかりと抱きしめると、リルムの香りが温かくも少し寂しい気持ちを呼び起こしてくる。飛空艇で空を見上げるリルムの背中を思い出す。

「……お前は、勝手に飛んでいったりなんかしないよな」
「ん……」

 まるで返事をするかのようにむにゃむにゃと身じろぎをするリルムにふっと微笑みかけて、セッツァーは目を閉じた。リルムの温かさが砂漠の夜の寒さの中で一際身に沁みた。
 願わくば、永遠に。
 自身の右手の小指に光る指輪に込めた願いは、現実には叶うはずのないものだとわかっていても、知ってしまった温もりは二度と手放したくはなかった。

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