10



2019/02/26 17:40
文字サイズ
文字組
フォントゴシック体明朝体
 初めて男を受け入れるリルムの中は、指を挿し込んだときに感じた一抹の不安が的中するかのように狭くて、このまま腰を入れ込むのも躊躇するほどの反発にセッツァーは思わず身を引きかけた。

「……っ、いたっ……」
「く……っリルム、もっと力抜け……」
「ど、どうしたらいいの……っ」

 どうしたらいいのかはこっちが聞きたい、という言葉を飲み込んで、リルムの唇を奪う。リルムの意識がそちらに向かって一瞬力が緩んだ隙に少しずつ腰を押し進めていく。ぎちぎちとした狭い通りをこじ開けていく感触に怯みそうになるが、通った分だけ柔らかく温かな壁が自身を包み込んでくれるのが気持ちいい。
 いい年をした大の男が、17も年下の少女の全てを奪うのに息を荒げて必死になっている。8年前の自分が今の自分を見たら何てざまだと笑うのだろう。素人相手にわざわざイカサマを働いてまでしなければ、自分の想いにも気づけず、女性を抱くのは初めてではないのに相手がリルムだというだけで、何を言われても愛らしく感じてしまう。
 ようやく根本まで自身を押し込むことに成功したものの、はくはくと息を吐くリルムの顔は快楽というよりも苦痛に歪んでいて、その長い睫毛の向こうの瞳はうっすらと涙を浮かべている。ふと見れば繋がった部位からは赤いものが流れていて、それが、苦しい。

「は……っ、リルム、すまん……」
「ふぇ……? セッツァー?」
「お前にそんな顔をさせたかったわけじゃないんだ……」

 目尻に浮かぶ涙を指先で拭ってくれるセッツァーの表情は、とても苦しそうで、リルムの胸もずきりと痛む。身体にまとわりつく長い銀髪が、逆光に照らされて綺麗だなと思った。
 下半身は痛い。だけどリルムの中はセッツァーでいっぱいになっていて、リルムの心はとても温かいもので満たされているのに、そんな表情をされると不安になってくる。

「どうしてそんなこと言うの? リルムうれしいのに、セッツァーはそうじゃない?」
「バカ野郎、嬉しいとか、そんなのわからねえぐらい頭ん中ぐちゃぐちゃだよ……」
「リルムも、おんなじ」

 へへ、と笑ってセッツァーの頬に触れる。その手を取って、てのひらに口づけられた。目を閉じたセッツァーの睫毛の意外な長さに胸が疼く。
 そのまま瞼に、額に、頬に口づけられて、セッツァーの大きな手がリルムの髪をまるであやすかのように撫でてくれるのが心地よくて、表情が緩むのを抑えられない。

「くすぐったい」
「なら、こういうのはどうだ」

 ぐい、と胸の膨らみを持ち上げられて、そのまま先端にぱくりと食いつかれる。甘噛みされて、甘い疼きが身体中を巡って、身体の奥がきゅんとしてくる。心なしか、リルムの中のセッツァーの物が急にはっきりと形を感じるようになった気がする。

「ん……っ、それ、すき……?」
「ああ。お前、ただでさえキツいのに締めんなよ……」
「わ、わかんないよそんなの……あっ」
「……っ、リルム、まだ痛いか」
「え……? そういえば、今はそんなに」

 そうか、とセッツァーが少し安堵したような表情を見せる。そのわずかな笑みと、繋がったままじんじんとした熱を持つ下半身に、波のような本能が首をもたげる。

「セッツァー」
「何だ」
「この後はどうしたらいいの? わたし、もっと知りたい、もっとセッツァーが欲しい」

 本能のままに言葉が口を突いて出て、セッツァーの腰に脚を絡める。セッツァー自身がぴくりと中で蠢くのがわかって、奥から何か溢れてくるのを感じた。セッツァーがどうしたものかと逡巡している様が伝わってくる。肉体が繋がっていると、あんなにわからなかったセッツァーの思いがまざまざと流れ込むような気がして、リルムはにこりと微笑んだ。

「セッツァー、すきだよ」
「……ああ、俺もだ。……もう止められねえぞ」
「うん、いいよ。だって、セッツァーの女にしてくれるんでしょ?」
「俺の女になってくれるか」
「当たり前じゃん」

 そうか、と笑うセッツァーの顔が本当に嬉しそうで眩しくて、そんな顔も初めて見たなとぼんやり思った。
 改めて覆い被さるように抱きしめられ、キスを贈られる。腰を抱え、セッツァーがゆるゆると腰を引き抜いて、また押し込む。自分の中を異物が往復する初めての感覚に、びくりと身体が跳ねる。でも、決して嫌なものじゃない。むしろ、もっとしてほしいという思いで頭の中が塗りつぶされていく。

「あっ、ひぁ、せっつぁ、ああ……っ!」
「く……っ、は、やべ……」

 歯を食いしばり、自慢の銀髪を乱しながら切なげに顔を歪めるセッツァーがとても妖艶で、そんなセッツァーをもっと見ていたいのに、追い立てられるように快感が次々と襲ってきて、何も考えられない。あんなに痛かったはずなのに、今はただただ熱くて、その熱がもっともっと欲しい。
 叶うなら、もう一度。許されるなら、永遠に。
 ぐちゅぐちゅという水音と、肌がぶつかる音の合間に、悲鳴にも似たリルムの甘い声とセッツァーの熱い呻き声が部屋の空間を埋めていく。熱に追い立てられるまま、流れる汗を拭おうともせず夢中になって互いを貪るように求め合ううちに、限界が近付いてくる。

「リルム、出すぞ……っ」
「ふぁ、あっ、んっ、セッツァー、きて、あぁっ!」
「くっ、すきだ……っ、リルム……っ」
「リルムも……っ!」

 セッツァーの唇でリルムの唇が塞がれる。固く抱きしめ合い、セッツァーが熱のままに強く腰を数回突き入れると同時に、リルムは限界を迎えた。少し遅れて限界を迎えたセッツァーも、リルムの中に全てを放出する。びくびくとセッツァーの物が中で暴れる感覚が、気持ちよくて、リルムは「ふぁ……あ……」と熱い息を吐いた。

「あ……っく……、お前の中、良すぎんだろ……」
「セッツァーのも……きもちいい……」

 汗ばんだ肌がしっとりと合わさって、温かくてしあわせだなと満たされた気持ちでいっぱいになる。そのままふわふわとした睡魔に襲われて、意識が沈んでいく。

「リルム……? 眠っちまったのか」

 落ちていく意識の向こうで、セッツァーの声が聞こえる。

「……もう、逃げねえし逃さない。愛してる、リルム」

 聞いたこともないほど優しい声で、額に柔らかな唇の感触。わたしも、と返そうとしたが言葉にならず、そのままリルムの意識は途切れた。

いいね!


11 | 9